はじめに
前回は、管理職にはさまざまな役割があり、
「組織が期待している役割」
と、
「実際に担っている役割」
が必ずしも一致していないことを考えました。
では、そもそも管理職にどのような役割を期待すべきなのでしょうか。
私たちは、すべての企業に共通する一つの「理想の管理職像」があるとは考えていません。
その理由は、
企業には、それぞれ異なる「組織の現在地」があると考えたからです。
「組織の現在地」が、管理職への期待を形づくる
研究レポートNo.001※では、「組織の現在地」という考え方を提案しました。
※【研究レポートNo. 001】は弊社ホームページをご覧ください➡ https://saitama-suslab.com/report/
企業には、それぞれ異なる現在地があります。
業務の標準化を優先すべき組織。
人材育成を優先すべき組織。
新しい事業への挑戦が求められている組織。
既存事業を着実に改善することが重要な組織。
現在地が違えば、優先すべき課題も変わります。
管理職についても同じです。
創業期や事業転換期であれば、新しい方向性を示し、人を巻き込む役割が重要になるかもしれません。
組織が成長し、人員や業務が増えてきた段階であれば、業務を安定して運営し、人材を育成する役割がより重要になるかもしれません。
どちらが正しいということではありません。
重要なのは、
今の自社では、どのような役割が最も求められているのか。
ということです。
つまり、
組織の現在地が、管理職への期待を形づくる。
これが研究レポートNo.002の基本的な考え方です。
視点を反対にすると、組織が見えてくる
では、この関係を反対側から見てみましょう。
管理職への期待が組織の現在地から生まれるのであれば、管理職が実際にどのような状態にあるのかを見ることで、組織について考えることもできるはずです。
例えば、
管理職が一日中プレイヤー業務に追われている。
それは、人員配置や業務設計のあり方が影響しているかもしれません。
管理職が十分に判断できない。
そこには、権限委譲や意思決定の仕組みが関係しているかもしれません。
部下が育たない。
評価制度や人材育成の仕組みを見直す必要があるかもしれません。
部門間の連携が進まない。
組織全体のコミュニケーションや情報共有のあり方が影響しているかもしれません。
ここで重要なのは、
「管理職に問題がある」
と考えることではありません。
管理職に表れている状態を手がかりとして、その背景にある組織を理解することです。
研究レポートでは、これを、
「管理職を見ることは、組織を見ることである」
と整理しています。
組織を見る4つのレンズ
では、実際に管理職を通して組織を見るとき、どこに着目すればよいのでしょうか。
研究レポートでは、4つのレンズを整理しています。
「役割」
「期待」
「関係」
「文化」
です。
これは、管理職を評価するためのチェックリストではありません。
管理職を手がかりとして、組織を理解するための視点です。
レンズ①「役割」
まず見るのは、管理職が何に時間を使っているのかです。
一日の大半をプレイヤー業務に費やしているのか。
部下との対話や育成に時間を使えているのか。
経営と現場をつなぐ役割を果たせているのか。
ここで見たいのは、管理職個人の能力ではありません。
組織は、管理職に何を担わせているのか。
という役割設計です。
「育成ができない管理職」ではなく、
「育成に時間を使えない組織」になっていないか。
そのように問いを変えてみます。
レンズ②「期待」
次は、「期待」です。
経営者は管理職に何を期待しているでしょうか。
そして、その期待は本人に伝わっているでしょうか。
「もっと主体的に動いてほしい」
「部下を育ててほしい」
そう考えていても、管理職本人は、
「何を優先すればよいのか分からない」
と感じているかもしれません。
期待そのものが問題なのではありません。
問題は、期待が具体的な役割として共有されているかです。
管理職の姿を見ることで、経営と現場の認識のずれが見えてくることがあります。
レンズ③「関係」
三つ目は、「関係」です。
管理職は、一人で仕事をしているわけではありません。
経営者との関係。
部下との関係。
他の管理職との関係。
他部門との関係。
例えば、
部下が相談しにくい。
管理職同士の連携が少ない。
部門間で情報共有が進まない。
こうした状態を、管理職一人のコミュニケーション能力だけで説明することはできません。
組織全体の関係性が、管理職の行動や判断にも影響します。
管理職を見ることで、
その企業の「関係の質」
が見えてきます。
レンズ④「文化」
最後は、「文化」です。
挑戦を歓迎するのか。
慎重な判断を重視するのか。
若手へ仕事を任せるのか。
経験を優先するのか。
管理職は、その会社の文化の中で日々意思決定を行っています。
そのため、管理職の判断や行動を見ていくと、
「この会社では、何が当たり前なのか」
が見えてきます。
つまり、管理職は、
組織文化を映し出す存在
でもあります。
4つのレンズから見えるもの
「役割・期待・関係・文化」。
この4つに共通していることがあります。
それは、
管理職だけを見ても、本質は見えない
ということです。
管理職は、組織の中で役割を果たしています。
だからこそ、管理職を通して組織を見ることで、
仕事の設計。
経営と現場の認識。
組織の関係性。
その企業が大切にしている価値観。
そして、自社の「組織の現在地」が見えてきます。
今回のまとめ
管理職を評価するのではなく、
管理職を通して組織を見る。
管理職の姿には、組織のさまざまな特徴が表れます。
何に時間を使っているのか。
何を期待されているのか。
誰とどのような関係を築いているのか。
どのような文化の中で判断しているのか。
そこから、
「管理職はどうなのか」
だけではなく、
「私たちの組織は、今どうなっているのか」
と考えてみる。
それが、自社の組織の現在地を理解する一つの方法になると、私たちは考えています。
■あなたの会社ではどうでしょうか?
□ 管理職は、実際に何に時間を使っていますか。
□ 経営からの期待は、管理職本人に共有されていますか。
□ 管理職が周囲と対話・連携できる関係がありますか。
□ 管理職の日々の判断には、どのような「会社らしさ」が表れていますか。
―あなたの会社の管理職の姿から、どのような「組織」が見えてくるでしょうか。
次回について
では、管理職を通して組織の特徴や課題が見えてきたとき、次に何をすればよいのでしょうか。
管理職に課題を感じると、
「管理職を育成しよう」
と考えることがあります。
もちろん、それは重要です。
しかし、管理職が学んだことを実践できる組織になっているでしょうか。
最終回では、
「管理職を育てる前に、組織を見つめる」
という視点から、管理職の成長と組織の成長について考えます。

