はじめに
「人材育成を強化したい。」
「管理職研修を始めたい。」
「人的資本経営に取り組みたい。」
企業との対話の中では、このようなご相談をいただくことがあります。もちろん、どれも重要なテーマです。
しかし、お話を伺っていくと、私たちは時々こんなことを感じます。
「今は、その前に取り組むべきことがあるのではないか。」
約300社との対話を通じて見えてきたのは、組織づくりには順番があるということでした。
今回は、「第一の現在地」についてご紹介します。
最初に必要なのは、「人を育てること」ではなく、「人が安心して働けること」
企業支援というと、「人材育成」や「管理職育成」が注目されがちです。
しかし、第一の現在地にある企業では、その前に整えるべき土台があります。
例えば、
- 採用しても定着しない
- 社員同士のコミュニケーションが少ない
- 上司と部下がほとんど話をしていない
- 現場が忙しく、教育の時間が取れない
- 「会社の方向性がよく分からない」という声がある
このような状態では、どれだけ良い研修を実施しても、十分な成果につながりにくいでしょう。
約300社との対話の中でも、「まずは安心して働ける環境づくりが必要だ」と感じる企業は少なくありませんでした。 つまり、第一の現在地とは、「人が育つ組織」をつくる前に、「人が働き続けられる組織」をつくる段階なのです。
「採用できない」の背景には、「定着」が隠れていることも多い
企業から最も多く聞かれた相談の一つが「採用」です。
しかし、お話を詳しく伺うと、採用だけが課題ではないケースが多くありました。
例えば、
「採用しても数年で辞めてしまう。」
「ようやく育ってきた頃に退職してしまう。」
「人が辞めるたびに、現場の負担が増えてしまう。」
こうした状況では、採用活動を強化するだけでは根本的な解決になりません。もちろん、給与や待遇が影響する場合もあります。しかし、それだけでは説明できないケースも多くありました。
職場で相談できる相手がいるか。
自分の役割が理解できているか。
会社の方向性を共有できているか。
日々の小さな対話があるか。
こうした「組織の土台」が、結果として定着率にも大きく影響していると私たちは感じています。
「組織の土台」は、派手ではない。でも、一番重要である
第一の現在地で取り組む内容は、決して派手ではありません。
経営理念の共有。
日常のコミュニケーション。
安全・安心な職場づくり。
役割の明確化。
基本的な人材育成。
一つひとつを見ると、「当たり前」と思われることばかりです。しかし、約300社との対話を通じて感じたのは、この「当たり前」ができている企業ほど、その後の管理職育成や人的資本経営、イノベーションといった次のステップへ進みやすいということでした。逆に、この土台が十分でないまま、新しい制度や施策だけを導入しても、思うような成果につながらないケースも見受けられました。 だからこそ、私たちは「第一の現在地」を最初の段階として位置付けています。決して「未熟」という意味ではありません。組織が次の一歩を踏み出すための、大切な基盤づくりの段階なのです。
今回のまとめ
第一の現在地では、「何か新しいことを始める」よりも、「組織の土台を整える」ことが重要になります。
安心して働ける環境があること。
対話があること。
会社の方向性が共有されていること。
人が定着し、育つための基盤があること。
こうした土台があってこそ、管理職育成や人的資本経営など、次のステップが活きてきます。 私たちは、約300社との対話を通じて、その順番の大切さを何度も感じてきました。
■あなたの会社ではどうでしょうか?
□ 採用した人材が定着する環境になっていますか。
□ 上司と部下が日常的に対話する時間を確保できていますか。
□ 経営方針や組織の方向性が現場まで共有されていますか。
□ 社員が「安心して働ける職場」だと感じられる環境になっていますか。
考えてみましょう。
―あなたの会社で、今、組織の土台づくりとして最も優先すべきことは何でしょうか。
次回について
組織の土台が整ってくると、次に重要になるのは「人を育てる組織」への移行です。
次回は、「第二の現在地」に焦点を当て、管理職、人材育成、キャリア支援など、組織化を進める段階で求められる視点についてご紹介します。
※本シリーズは、約300社の地域企業との対話を通じて得られた気づきや傾向をもとに執筆しています。個別企業を評価・紹介するものではなく、地域企業支援の一つの視点としてまとめたものです。

