第1回 約300社との対話から見えてきた共通点①~「企業規模」ではなく、「組織の現在地」を見るという視点~

目次

はじめに

昨年度、私たちは「さいたま市SDGs企業認証制度」の事務局として、約300社の地域企業と関わる機会をいただきました。認証に向けた相談やアンケート、セミナー、企業との対話などを通じて、多くの経営者や担当者の皆さまから現場の声を伺いました。

最初は、SDGsやサステナビリティへの取組状況を把握することが主な目的でした。

しかし、企業との対話を重ねる中で、私たちはある共通点に気づきました。

一見すると企業ごとに抱える課題は異なります。採用に悩む企業もあれば、離職に悩む企業もあります。管理職育成や人材育成に苦労する企業もあれば、シニア人材の活躍に課題を感じている企業もあります。

ところが、それらを一つひとつ整理していくと、多くの課題は「人」に関わる問題へとつながっていました。
そして、もう一つ気づいたことがあります。
それは、同じ課題であっても、企業によって必要な支援はまったく異なるということでした。

今回は、私たちが約300社との対話を通じてたどり着いた「組織の現在地」という考え方についてご紹介したいと思います。

同じ課題でも、企業によって状況はまったく違う

例えば、「採用できない」という相談。
一見すると、どの企業も同じ悩みのように見えます。しかし実際には、その背景は企業ごとに大きく異なっていました。

ある企業では、採用活動そのものが十分にできていないことが原因でした。
一方で、別の企業では採用はできているものの、入社後の定着に課題がありました。さらに別の企業では、採用ではなく、管理職の育成不足によって職場環境が悪化し、結果として人が辞めてしまうというケースもありました。

つまり、「採用できない」という表面的な課題だけを見ても、本当の原因は見えてきません。

離職についても同じです。
給与だけが理由ではありません。管理職との関係、キャリア形成への不安、社内コミュニケーション、組織風土など、さまざまな要因が重なり合っています。
課題は同じでも、その背景は企業ごとに違う。これが、私たちが現場で何度も感じたことでした。

企業規模ではなく、「組織の現在地」が重要だった

企業支援では、「従業員数」や「売上規模」で企業を分類することが少なくありません。
もちろん、それらは企業を理解するうえで大切な情報です。しかし、約300社との対話を通じて感じたのは、それだけでは企業の本当の姿は見えてこないということでした。

例えば、同じ従業員50名の企業でも、

  • 管理職が育ち始めている企業
  • 経営者一人に判断が集中している企業
  • 部門間の連携がスムーズな企業
  • 社内コミュニケーションに課題を抱える企業

では、必要となる支援はまったく異なります。また、100名規模の企業よりも、30名規模の企業の方が組織として成熟しているケースも珍しくありませんでした。

つまり、企業規模だけでは、本当に必要な支援は見えてこないのです。
私たちは、この違いを「組織の現在地」と考えるようになりました。企業が今どのような状態にあり、何を優先すべき段階なのか。そこを理解することが、支援の出発点になると考えています。

「何を支援するか」より、「今、何が必要か」

地域企業支援というと、「どんな研修を行うか」「どんな制度を導入するか」「どんな補助金を紹介するか」という議論になりがちです。もちろん、それらも重要です。しかし、私たちが現場で感じたのは、それ以前に考えるべきことがあるということでした。

それは、「その企業は今、どのような状態にあるのか。」という視点です。

まだ組織の土台づくりが必要な企業もあれば、管理職育成を優先すべき企業もあります。
また、人材育成よりも、まずは経営理念や方針の共有から始めた方が良い企業もありました。
どの施策が良いかではありません。今、その企業にとって最も優先すべきことは何か。
この問いから支援を始めることが、結果として企業の成長につながるのではないか。私たちは、そのように考えています。

今回のまとめ

約300社との対話を通じて私たちが感じたのは、企業の課題は一社一社異なり、同じテーマであっても必要な支援はまったく違うということでした。
だからこそ、企業規模だけで判断するのではなく、「組織の現在地」という視点から企業を見ることが重要になります。
私たちは、この考え方を「地域企業 組織の現在地モデル」として整理しました。
企業を評価するためではありません。企業が次の一歩を考えるための共通言語として活用していただきたいと考えています。

■あなたの会社ではどうでしょうか?

□ 自社が今、どのような状態にあるか、組織全体として整理できていますか。

□ 「採用」「育成」「離職」など、個別の課題だけで議論していませんか。

□ 今、自社にとって最も優先すべきテーマが明確になっていますか。

□ 他社の成功事例をそのまま参考にしていませんか。

考えてみましょう。

―あなたの会社にとって、「今、最も優先すべきこと」は何でしょうか。

次回について

今回ご紹介した「組織の現在地」という考え方は、約300社との対話を通じて生まれたものです。
では、実際に現場ではどのような「人」の課題が多く聞かれたのでしょうか。
次回は、採用、離職、管理職、人材育成、シニア人材など、私たちが繰り返し耳にした「人」に関する課題を整理しながら、その背景にある共通点について考えてみたいと思います。


※本シリーズは、約300社の地域企業との対話を通じて得られた気づきや傾向をもとに執筆しています。個別企業を評価・紹介するものではなく、地域企業支援の一つの視点としてまとめたものです。

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