はじめに
これまで2回にわたり、約300社の地域企業との対話から見えてきた共通点をご紹介してきました。
第1回では、「企業規模」ではなく「組織の現在地」という視点が重要であること。
第2回では、採用や離職、管理職育成、人材定着など、一見別々に見える課題が、実は「人」という共通テーマにつながっていることをお伝えしました。
では、こうした課題をどのように整理すればよいのでしょうか。
企業ごとに状況が違う中で、何を優先し、どこから取り組めばよいのでしょうか。
約300社との対話を重ねる中で、私たちはその問いに向き合い続けました。 そしてたどり着いたのが、「地域企業 組織の現在地モデル」という考え方です。
課題ではなく、「状態」を見る
企業支援では、どうしても「課題」から考えがちです。
採用が課題。
離職が課題。
管理職育成が課題。
人的資本経営への対応が課題。
もちろん、それらは間違いではありません。
しかし、約300社との対話を通じて感じたのは、「課題」だけを見ていては、本当に必要な支援は見えてこないということでした。
例えば、管理職育成が課題だと言われても、その企業ではまず経営方針の共有が必要かもしれません。
逆に、人材育成を始めようとしていても、管理職自身が日々の業務に追われ、育成に時間を割けない状況であれば、研修だけでは成果につながりません。
つまり、大切なのは課題そのものではなく、「その企業が今、どのような状態にあるのか」を理解することです。 私たちは、この「状態」を「組織の現在地」と表現するようになりました。
三つの現在地という考え方
約300社との対話を整理していくと、企業は大きく三つの現在地に分けて考えられるのではないかという仮説にたどり着きました。
もちろん、企業を評価したり、順位を付けたりするためのものではありません。
一つの企業の中に複数の現在地が存在することもありますし、部門によって現在地が異なることもあります。
それでも、「今どの段階にいるのか」を整理することは、次の一歩を考える上で非常に有効でした。
私たちは、この三つを次のように整理しています。
第一の現在地
組織の土台づくりが中心となる段階です。
採用や定着、安全・安心な職場づくり、基本的なコミュニケーションなど、人が働き続けるための基盤を整えることが優先されます。
第二の現在地
組織化を進める段階です。
管理職育成や人材育成、キャリア支援、部門間連携など、人を育て、組織として成長する仕組みづくりが重要になります。
第三の現在地
価値創造へ向かう段階です。
人的資本経営やウェルビーイング、イノベーション、共創など、組織の力を企業価値や地域価値へつなげていく段階です。
もちろん、第一が低く、第三が高いということではありません。 企業にとって必要なのは、「今、自社にとって何を優先すべきか」を整理することです。
モデルの目的は、「評価」ではなく「対話」
私たちは、このモデルを作る中で一つだけ大切にしたいことがありました。
それは、「企業を評価するためのモデルにはしない」ということです。
企業には、それぞれの歴史があります。
経営者の想いがあります。
地域性もあります。
同じ業種であっても、目指す方向は異なります。
だからこそ、「第一だから未熟」「第三だから優れている」という考え方ではありません。
大切なのは、
「今、自社にとって最も優先すべきテーマは何か。」
その対話を始めることです。
このモデルは、そのための共通言語として活用していただきたいと考えています。
今回のまとめ
約300社との対話を通じて、私たちがたどり着いたのは、「課題を見る」のではなく、「組織の現在地を見る」という考え方でした。
組織の現在地が分かれば、優先すべきテーマも見えてきます。
そして、支援の内容や順番も変わります。
私たちは、この考え方が、これからの地域企業支援において重要な視点になると考えています。
※今回ご紹介した『地域企業 組織の現在地モデル』については、図や各現在地の詳細をまとめた研究レポートNo.001でも詳しくご紹介しています。弊社HPをご参照ください。 https://saitama-suslab.com/
■あなたの会社ではどうでしょうか?
□ 自社がどの現在地にあるのか説明できますか。
□ 部門によって現在地が異なると感じることはありませんか。
□ 「今、何を優先すべきか」が整理できていますか。
□ 新しい施策を始める前に、現在地を確認していますか。
考えてみましょう。
―あなたの会社は、どの現在地にいると感じますか。
次回について
「組織の現在地モデル」が目指しているのは、企業を分類することではありません。
では、それぞれの現在地では、どのような課題があり、どのような支援が求められるのでしょうか。
次回は、「第一の現在地」に焦点を当てながら、組織の土台づくりがなぜ重要なのかを考えていきます。
※本シリーズは、約300社の地域企業との対話を通じて得られた気づきや傾向をもとに執筆しています。個別企業を評価・紹介するものではなく、地域企業支援の一つの視点としてまとめたものです。

