第2回 管理職を通して組織を見る―「役割・期待・関係・文化」の4つのレンズから読み解く―

目次

はじめに

前回は、管理職にはさまざまな役割があり、

「組織が期待している役割」

と、

「実際に担っている役割」

が必ずしも一致していないことを考えました。

では、そもそも管理職にどのような役割を期待すべきなのでしょうか。

私たちは、すべての企業に共通する一つの「理想の管理職像」があるとは考えていません。

その理由は、

企業には、それぞれ異なる「組織の現在地」があると考えたからです。

「組織の現在地」が、管理職への期待を形づくる

研究レポートNo.001※では、「組織の現在地」という考え方を提案しました。

※【研究レポートNo. 001】は弊社ホームページをご覧ください➡ https://saitama-suslab.com/report/

企業には、それぞれ異なる現在地があります。

業務の標準化を優先すべき組織。

人材育成を優先すべき組織。

新しい事業への挑戦が求められている組織。

既存事業を着実に改善することが重要な組織。

現在地が違えば、優先すべき課題も変わります。

管理職についても同じです。

創業期や事業転換期であれば、新しい方向性を示し、人を巻き込む役割が重要になるかもしれません。

組織が成長し、人員や業務が増えてきた段階であれば、業務を安定して運営し、人材を育成する役割がより重要になるかもしれません。

どちらが正しいということではありません。

重要なのは、

今の自社では、どのような役割が最も求められているのか。

ということです。

つまり、

組織の現在地が、管理職への期待を形づくる。

これが研究レポートNo.002の基本的な考え方です。

視点を反対にすると、組織が見えてくる

では、この関係を反対側から見てみましょう。

管理職への期待が組織の現在地から生まれるのであれば、管理職が実際にどのような状態にあるのかを見ることで、組織について考えることもできるはずです。

例えば、

管理職が一日中プレイヤー業務に追われている。

それは、人員配置や業務設計のあり方が影響しているかもしれません。

管理職が十分に判断できない。

そこには、権限委譲や意思決定の仕組みが関係しているかもしれません。

部下が育たない。

評価制度や人材育成の仕組みを見直す必要があるかもしれません。

部門間の連携が進まない。

組織全体のコミュニケーションや情報共有のあり方が影響しているかもしれません。

ここで重要なのは、

「管理職に問題がある」

と考えることではありません。

管理職に表れている状態を手がかりとして、その背景にある組織を理解することです。

研究レポートでは、これを、

「管理職を見ることは、組織を見ることである」

と整理しています。

組織を見る4つのレンズ

では、実際に管理職を通して組織を見るとき、どこに着目すればよいのでしょうか。

研究レポートでは、4つのレンズを整理しています。

「役割」
「期待」
「関係」
「文化」

です。

これは、管理職を評価するためのチェックリストではありません。

管理職を手がかりとして、組織を理解するための視点です。

レンズ①「役割」

まず見るのは、管理職が何に時間を使っているのかです。

一日の大半をプレイヤー業務に費やしているのか。

部下との対話や育成に時間を使えているのか。

経営と現場をつなぐ役割を果たせているのか。

ここで見たいのは、管理職個人の能力ではありません。

組織は、管理職に何を担わせているのか。

という役割設計です。

「育成ができない管理職」ではなく、

「育成に時間を使えない組織」になっていないか。

そのように問いを変えてみます。

レンズ②「期待」

次は、「期待」です。

経営者は管理職に何を期待しているでしょうか。

そして、その期待は本人に伝わっているでしょうか。

「もっと主体的に動いてほしい」

「部下を育ててほしい」

そう考えていても、管理職本人は、

「何を優先すればよいのか分からない」

と感じているかもしれません。

期待そのものが問題なのではありません。

問題は、期待が具体的な役割として共有されているかです。

管理職の姿を見ることで、経営と現場の認識のずれが見えてくることがあります。

レンズ③「関係」

三つ目は、「関係」です。

管理職は、一人で仕事をしているわけではありません。

経営者との関係。

部下との関係。

他の管理職との関係。

他部門との関係。

例えば、

部下が相談しにくい。

管理職同士の連携が少ない。

部門間で情報共有が進まない。

こうした状態を、管理職一人のコミュニケーション能力だけで説明することはできません。

組織全体の関係性が、管理職の行動や判断にも影響します。

管理職を見ることで、

その企業の「関係の質」

が見えてきます。

レンズ④「文化」

最後は、「文化」です。

挑戦を歓迎するのか。

慎重な判断を重視するのか。

若手へ仕事を任せるのか。

経験を優先するのか。

管理職は、その会社の文化の中で日々意思決定を行っています。

そのため、管理職の判断や行動を見ていくと、

「この会社では、何が当たり前なのか」

が見えてきます。

つまり、管理職は、

組織文化を映し出す存在

でもあります。

4つのレンズから見えるもの

「役割・期待・関係・文化」。

この4つに共通していることがあります。

それは、

管理職だけを見ても、本質は見えない

ということです。

管理職は、組織の中で役割を果たしています。

だからこそ、管理職を通して組織を見ることで、

仕事の設計。

経営と現場の認識。

組織の関係性。

その企業が大切にしている価値観。

そして、自社の「組織の現在地」が見えてきます。

今回のまとめ

管理職を評価するのではなく、

管理職を通して組織を見る。

管理職の姿には、組織のさまざまな特徴が表れます。

何に時間を使っているのか。

何を期待されているのか。

誰とどのような関係を築いているのか。

どのような文化の中で判断しているのか。

そこから、

「管理職はどうなのか」

だけではなく、

「私たちの組織は、今どうなっているのか」

と考えてみる。

それが、自社の組織の現在地を理解する一つの方法になると、私たちは考えています。

■あなたの会社ではどうでしょうか?

□ 管理職は、実際に何に時間を使っていますか。

□ 経営からの期待は、管理職本人に共有されていますか。

□ 管理職が周囲と対話・連携できる関係がありますか。

□ 管理職の日々の判断には、どのような「会社らしさ」が表れていますか。

―あなたの会社の管理職の姿から、どのような「組織」が見えてくるでしょうか。

次回について

では、管理職を通して組織の特徴や課題が見えてきたとき、次に何をすればよいのでしょうか。

管理職に課題を感じると、

「管理職を育成しよう」

と考えることがあります。

もちろん、それは重要です。

しかし、管理職が学んだことを実践できる組織になっているでしょうか。

最終回では、

「管理職を育てる前に、組織を見つめる」

という視点から、管理職の成長と組織の成長について考えます。

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