第1回 なぜ今、「管理職」を考える必要があるのか ― 管理職への期待と、実際に担っている役割から考える ―

目次

はじめに

近年、「管理職」に関する話題に触れる機会が増えています。

地域企業の経営者や管理職の方と対話していても、

「管理職を任せられる人材が育たない」

「プレイヤー業務が多く、マネジメントまで手が回らない」

「部下を育てたいが、その時間を確保できない」

「何をどこまで期待されているのか分からない」

「経営と現場の間で悩んでいる」

といった声を聞くことがあります。

こうした状況を見ると、

「管理職研修を充実させよう」

「管理職の意識を変えよう」

と考えたくなるかもしれません。

もちろん、管理職が知識やスキルを身につけることは重要です。

しかし、その前に考えてみたいことがあります。

本当に、管理職だけを見ればよいのでしょうか。 今回は、なぜ今「管理職」を考える必要があるのか、そして管理職に求められている役割について考えていきます。

企業を取り巻く環境が変わっている

企業を取り巻く環境は、大きく変化しています。

構造的な人手不足。

働き方や価値観の多様化。

デジタル技術の進展。

事業環境の不確実性。

こうした変化の中で、企業には、日々の事業を安定して運営しながら、新たな変化にも対応していくことが求められています。

人材確保が難しくなる中では、人を採用するだけではなく、今いる人材が力を発揮し、成長し、組織として成果を生み出していくことも重要になります。

一人ひとりが自ら考え、行動する。

部署や世代を越えて協力する。

業務を改善する。

変化を現場で受け止め、新たな価値を生み出す。

こうした力は、個人だけではなく、組織として発揮されるものです。 つまり、外部環境の変化は、企業に求められる組織のあり方そのものを変えていると考えることができます。これは研究レポート第1章の出発点でもあります(研究レポートNo002はHPに掲載しています)。

その変化を、誰が現場へつなぐのか

では、経営環境の変化を、組織の中で誰が受け止め、現場へつないでいくのでしょうか。

経営方針を現場へ伝える。

現場で起きていることを経営へ届ける。

日々の業務を支えながら、人材を育てる。

部門間をつなぐ。

必要な変化を現場へ浸透させる。

その接点に位置する存在の一つが、管理職です。

外部環境が変われば、組織に求められることも変わります。

そして、組織に求められることが変われば、管理職への期待も変わります。

近年、

「人を育ててほしい」

「部門を越えて連携してほしい」

「現場から改善を進めてほしい」

「変化を推進してほしい」 といった期待が管理職へ広がっている背景には、こうした組織の変化があります。

管理職は「役割の束」である

では、管理職とは何をする人なのでしょうか。

部下を管理する人。

組織をまとめる人。

目標を達成する人。

どれも間違いではありません。

しかし、実際の管理職が担っている仕事は、もっと多岐にわたります。

業績や進捗を管理する。

日々の業務を安定して運営する。

部下を育成し、相談に応じる。

経営方針を現場へ伝える。

現場の状況を経営へ届ける。

部門間を調整する。

業務改善や変革を推進する。

さらに企業によっては、自ら営業や実務を担うプレイヤーでもあります。

経営学者のヘンリー・ミンツバーグは、管理職の仕事を「対人関係」「情報」「意思決定」という三つの領域に整理し、その中に複数の役割があることを示しました。

つまり、管理職は一つの仕事だけをする存在ではありません。状況に応じて複数の役割を切り替えながら、組織を動かしている存在なのです。

「期待される役割」と「実際の役割」

ここで重要なのが、

組織が管理職に期待している役割

と、

管理職が実際に担っている役割

を分けて考えることです。

例えば、

経営者は「人材育成を進めてほしい」と期待している。

しかし、管理職は一日の大半をプレイヤー業務やトラブル対応に費やしている。

経営者は「主体的に判断してほしい」と期待している。

しかし、管理職には十分な権限が与えられていない。

経営者は「部門間をつないでほしい」と期待している。

しかし、そのための対話や情報共有の場が設けられていない。

こうした状況では、管理職が努力していても、経営側からは、

「期待した役割を果たしていない」

と見えるかもしれません。

一方、管理職からは、

「期待ばかり増えている」

と見えるかもしれません。

ここで考えたいのは、管理職の能力だけではありません。

期待と現実の間に、どのようなギャップがあるのか。 ということです。

役割を整理することは、仕事を増やすことではない

管理職には、多くの役割があります。

だからといって、それらをすべて同じように求める必要はありません。

今、自社では管理職に何を最も期待するのか。

業務を安定させることなのか。

人材育成なのか。

部門間連携なのか。

変革を進めることなのか。

重要なのは、その優先順位を考えることです。

役割を整理することは、管理職の仕事を増やすことではありません。

組織として、何を優先するのかを明確にすることです。

その優先順位が共有されて初めて、管理職は本来期待されている役割へ時間と力を注ぎやすくなります。

そして、管理職に何を期待するのかを考えていくと、ある問いに行き着きます。

「今の自社は、どのような状態にあるのか」

という問いです。 研究レポートでは、管理職の役割を整理することを「管理職を変えることではなく、組織を整理すること」と位置づけています。

今回のまとめ

管理職への期待は、以前より多様になっています。

しかし、管理職に多くを求めるだけでは、組織は変わりません。

重要なのは、

管理職に何を期待しているのか。

管理職は実際に何を担っているのか。

その二つは一致しているのか。

を見ることです。

そして、もしそこにギャップがあるのであれば、管理職本人だけではなく、その背景にも目を向けてみる。

なぜ、その役割が一人に集中しているのでしょうか。

なぜ、期待されている役割を実践できないのでしょうか。 そう考えていくと、管理職というテーマの向こう側に、組織そのものが見えてきます。

■あなたの会社ではどうでしょうか?

□ 管理職に何を最も期待しているか、明確になっていますか。

□ その期待は、管理職本人にも共有されていますか。

□ 管理職に期待している役割と、実際に時間を使っている仕事は一致していますか。

□ 期待する役割を果たすための時間や権限、環境は整っていますか。

―あなたの会社では、今、管理職に何を最も期待しているでしょうか。

次回について

では、管理職に求められる役割は、どの企業でも同じなのでしょうか。

私たちは、そうではないと考えています。

管理職への期待は、その会社の「組織の現在地」によって変わります。

そして視点を反対にすると、管理職の姿から、その背景にある組織を見ることもできます。

次回は、

「管理職を通して組織を見る」 という研究レポートNo.002の中心となる考え方を、「役割・期待・関係・文化」という4つのレンズとともに考えます。

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