農業✖️観光業共創が生む新しい地方創生モデル

◆はじめに

地方の観光業と農業は、それぞれ魅力的な地域資源を持ちながらも、共通して課題があります。例えば、観光ではリピーターの獲得や季節変動による集客数の不安定さ、農業では高齢化や困難不足、農作物価格の変動などが問題となっています。さらにまた人口流出による地域経済の縮小的な社会課題となっています。

◆参加企業・自治体紹介

🔼観光業に携わる地元の中小企業は、地元資源を最大限に活かした体験型サービスを提供し、都市部や国外からの観光客の誘致に尽力しています。

🔼農業者は、観光客にとって「非日常」となる農作業や里山の暮らしを提供する主体です。地域の若い世代や新規就農希望者との交流も増え、新たなコミュニティが生まれつつあります。

🔼自治体は、連携のハブとして、補助金の給付、推進活動、ワーケーションや農泊の推進、交通アクセスの改善など、広範囲にわたる支援体制を整えています。

◆コラボの背景と目的

観光業と農業、そして自治体が手を組む背景には、それぞれが抱える課題と、その課題を一社や一組織だけでは解決できないという共通認識がありました。
🔼観光業の地元中小企業
温泉や名所といった従来型の観光資源だけではリピーターを獲得しにくく、地域独自の体験型コンテンツの不足に課題を感じていました。

🔼農家
高齢化や担い手不足に直面するなかで、規格外農産物の活用や収益の多角化が急務でした。

🔼自治体
高齢化や過疎化が進み、税収入の減少やインフラ整備に活用する資金の減少などから地域の活性化が緊急の課題となっていました。

こうした課題意識が合流することで、「農業体験や農泊を観光コンテンツとして磨き上げれば、観光客の滞在時間や消費を増やし、同時に農家の収益向上や担い手確保にもつながる」という共通の目的が生まれました。観光業は顧客への発信力とサービス提供ノウハウを持ち、農家は四季折々の営みや食文化という魅力的な素材を提供でき、自治体は両者をつなぎ制度・資金・広報の面から後押しする。この「三者の強みを組み合わせる」形が、地域全体の持続可能性を高めるための新しいビジネスモデルとして位置づけられました。

◆具体的な取り組み

各地で行われている農業体験ツアーは、例えば田植えや稲刈りの参加、野菜や果樹の収穫体験、農家の日常や地域の歴史・文化を肌で感じられるものです。
中には、地域の伝統料理を学ぶワークショップや、里山散策と組み合わせた体験プログラムも実施されています。物や加工品をその場で購入できる「直売」や、オンラインショップでのその後によって多角化がフォローされております。
また、自治体側ではガイド人材の育成、観光パンフレットや多言語案内の作成、予約・決済システムのデジタル化など、旅行受け入れ強化にも注力体制をとっています。

◆社会課題解決への効果

このような取り組みは、観光客数・滞在日数の増加や交流人口の拡大を起こすだけでなく、農業の売上アップや新たな雇用創出につながっています。
特に、都市部からのリピーターや国際的な観光客が増えることで、地域外とのつながり農業体験を通じ、地域住民と都市部の人々が協力し合うことでコミュニティの活性化や人材育成にも取り組んでおり、農村への移住・定住を検討する若者層の増加という副次的な効果も報告されています。

◆課題と展望

持続可能なツアー運営には課題も少なくありません。
例えば、人材不足や高齢化が進む中、体験プログラムの安全管理や品質維持、長期的な集客方法の確立が必要です。
今後は、デジタル技術活用による効率化や、他の地域とのマッチング・事例共有など、横展開による効果も期待されています。

◆まとめ

農業体験ツアーのような「地域資源の価値化」は、その土地ならではの体験や人とのつながりを生み出し、地域社会の経済的・人間的な再生を着実に進める取り組みとして注目されています。
一方で、各主体が単独で課題を解決しようとすると、人手・資金・ノウハウの不足に直面し、対応は困難です。しかし、地域の企業や農家、自治体が力を合わせることで大きな相乗効果が生まれ、従来は解決が難しいとされていた課題も前進することが実例から明らかになっています。
こうした事例を通じて、企業間や自治体を巻き込んだコラボレーションこそが、地域の大きな課題を解決する有効な手段であることが実証されつつあります。