70%のシェアを捨てた企業の奇跡!! 〜老舗ゴム製品メーカーが描く、サステナブルな未来と人材革命〜

目次

  1. ◆雪ヶ谷化学工業株式会社基本情報
  2. ◆サステナブル経営への転換プロセス
  3. ◆人材戦略の革新と成果
  4. ◆サステナブル経営の波及効果
  5. ◆今後の展望と課題
  6. ◆結論:サステナブル経営が拓く新たな可能性
  7. ◆お知らせ

◆雪ヶ谷化学工業株式会社基本情報


本社所在地:東京都品川区東大井5丁目12番10号 大井朝陽ビル6F14
・設立:1952年11月7日34
・創業:1951年4
・資本金:1,000万円34
・従業員数:73名(2024年10月時点)、65名(本社・つくば事業所)/310名(グループ総計)※2018年3月現在
・事業内容
1 特殊発泡体の製造及び販売
2 化粧品用具の製造及び販売
売上高:23億円(2018年10月期実績)
・主要事業所
1 本社(東京都品川区)
2 つくば事業所(茨城県稲敷市)
3 海外事業所(中国上海、タイ、マレーシア)

雪ヶ谷化学工業は、化粧用スポンジをはじめとするゴム製品の製造・販売を行う企業で、世界的なシェアを持つ老舗企業。1951年の創業以来、特殊発泡体の専業メーカーとして成長を続けており、化粧品用スポンジだけでなく、自動車部品、建材、音響機器など幅広い分野で製品を展開している。

雪ヶ谷化学工業株式会社がサステナブル経営に舵を切った背景には、社会的責任と事業継続の両立という大きな課題があった。世界シェア70%を誇る化粧品スポンジメーカーとして、同社は石油由来の原料を使用した製品で成功を収めていた。しかし、2019年、坂本昇社長は「社会課題解決型製品」の重要性に気づき、環境負荷の高い既存製品からの大転換を決意。

この決断は、単なる環境配慮だけでなく、将来的な事業リスクの回避と新たな成長機会の創出を見据えたものであった。石油資源の有限性や環境規制の強化、消費者の環境意識の高まりといった外部要因に加え、従業員、特に若手人材の価値観の変化に対応する必要性を感じたからであった。

◆サステナブル経営への転換プロセス


雪ヶ谷化学工業のサステナブル経営への転換は、以下のステップで進められた。

🔼パーパスの再定義
理由:企業の存在意義を明確にし、全社的な方向性を統一するため。

詳細:「環境に優しい製品づくり」という新たなパーパスを設定。これは単なるスローガンではなく、社員全員が参加する勉強会やワークショップを通じて、SDGsとGXの理解を深める取り組みを行っていった。「BtoB to the Future」というスローガンのもと、CO2排出量削減や廃棄物削減などの具体的な目標を設定し、全社員が共通の目的意識を持つことを目指した。

🔼製品開発の革新
理由:環境負荷の低減と社会課題解決を両立させるため。

詳細:バイオマスプラスチック製品の開発に注力し、石油由来原料の使用を削減していった。具体的には、三井化学の「Econykol®」を採用し、ひまし油由来のポリウレタン原料を使用した製品開発を開始。この取り組みは、CO2排出削減だけでなく、インドの農家支援にもつながる可能性を持っている。

🔼サプライチェーンの見直し
理由:人権問題や環境問題に配慮した持続可能な調達を実現するため。


詳細:フェアトレードの天然ゴムを100%使用した化粧用スポンジ「NR-FT」を開発。この過程で、自社スタッフを天然ゴムの生産地に派遣し、フェアトレードの実態の確認を実施。さらに、フェアトレードを証明する独自の認証マークを作成し、業界全体のサステナビリティ向上を目指していった。

🔼社員参加型の環境保護活動
理由:社員の環境意識向上と主体的な参加を促進するため。


詳細:定期的な環境保護活動を実施。社員が率先してSDGs推進のための目標を設定し、実行のための企画を立て、自発的に取り組むようになった。これにより、社員のエンゲージメントが向上し、サステナビリティへの理解が深まっていった。

🔼認証制度の創設
理由:自社の取り組みを可視化し、業界全体のサステナビリティ向上を促進するため。


詳細:フェアトレードを証明する独自の認証マークを作成。これは、天然ゴムのフェアトレードを証明する既存の機関がなかったため、自社で認証制度を設けることで、取り組みの信頼性を高め、業界全体に波及効果をもたらすことを目指した。

◆人材戦略の革新と成果


サステナブル経営への転換は、人材面で顕著な成果をもたらした。

🔼若手エンジニアの離職率低下
前年比30%の離職率低下は、単なる数字以上の意味を持つ。この成果の背景には、社会課題解決に直接貢献できる仕事内容への共感が大きな要因となっている。具体的には、バイオマスプラスチック製品の開発やフェアトレード天然ゴムの活用など、環境や人権に配慮した製品開発プロジェクトへの参加機会が増えたことが挙げられる。若手エンジニアたちは、自分たちの技術が社会にポジティブな影響を与えられることに強い使命感と誇りを感じるようになっていった。

🔼採用力への影響
環境系学部出身者の応募が2倍に増加したことは、雪ヶ谷化学工業のサステナビリティへの取り組みが、優秀な人材を引きつける強力な磁石となったことを示している。特筆すべきは、採用一人の募集に対して200人もの応募があったという事実。これは、同社のSDGsへの取り組みが若い世代の価値観と強く共鳴していることを示している。学生からは「利益だけでなく地域に密着しており、社会問題に取り組むことができる会社」「社会・地域貢献と利益を両立することができ、また新しい事にも積極的に挑戦する会社」といった評価が寄せられたという。

🔼社員のエンゲージメント向上
当初は困惑や懐疑的な反応もあった社員たちが、自発的にSDGs推進のための目標設定や企画立案を行うようになっていった。この変化は、全社を挙げてのSDGs教育と、社員参加型のプロジェクト推進が功を奏した結果と言える。特に、「SDGsは慈善事業ではなく本業そのもの」という経営陣のメッセージが、社員の意識改革に大きな影響を与えた。

🔼イノベーション文化の醸成
サステナブル製品の開発過程で、社員の創造性と問題解決能力が大きく向上した。例えば、それまで廃棄されていたスポンジやゴムの端材をサーマルリサイクル燃料とする廃ゴム燃料化システムの開発は、社内のイノベーション文化の表れである。これらの取り組みが新たな製品アイデアや業務改善提案の増加につながり、会社全体の競争力向上に寄与している。

🔼世代を超えた技術伝承
サステナブル製品開発のプロジェクトが、ベテラン社員と若手社員の協働の場となり、効果的な技術伝承の機会を創出していった。特に、フェアトレード天然ゴム製品の開発過程では、従来の技術に新しい環境配慮の視点を加えることで、世代を超えた知識と経験の融合が実現した。

◆サステナブル経営の波及効果


雪ヶ谷化学工業のサステナブル経営は、以下のような広範な影響をもたらした。

🔼取引先との関係強化
当初は購買部門の反応が鈍かった化粧品メーカーも、徐々にサステナブル製品の価値を認識するようになっていった。雪ヶ谷化学工業が開発した「フェアトレード天然ゴムマーク」は、取引先企業も自由に使用できるようにすることで、サプライチェーン全体でのサステナビリティ推進を促進している。

🔼業界全体への影響
世界シェア70%を誇る企業の変革は、化粧品業界全体にサステナビリティへの取り組みを促す大きな影響を与えたといって良い。特に、100%フェアトレード天然ゴム認証マークの導入は、業界標準を変える可能性を秘めている。

🔼地域社会との連携
環境保護活動を通じて地域社会との結びつきも強化されていった。特筆すべきは、「iSIP」(稲敷サステナブル工業団地プロジェクト)の立ち上げだ。これは「日本初のSDGs工業団地」を目指す取り組みで、地域全体での環境問題への取り組みを促進する後押しとなる。

🔼グローバルな社会課題への貢献
フェアトレードの推進により、原料生産地の労働環境改善や貧困問題解決にも寄与している。特に、天然ゴムの調達過程での奴隷労働・児童労働の廃絶に向けた取り組みは、グローバルなサプライチェーンにおける人権問題解決の一助となっている。

◆今後の展望と課題


雪ヶ谷化学工業のサステナブル経営は、大きな成果を上げつつあるが、以下のような課題も残されている。

🔼コスト競争力の維持
サステナブル原料の使用によるコスト上昇を、いかに抑制し競争力を維持するか。

🔼技術革新の継続

バイオマス原料の更なる活用や、製造プロセスの効率化など、継続的な技術革新が必要。


🔼グローバル展開
日本発のサステナブル製品を、いかにグローバル市場に展開していくか。

🔼人材育成の長期的戦略
サステナビリティ分野の専門性を持つ人材の育成と、その知識・スキルを全社的に展開する仕組みづくり。

◆結論:サステナブル経営が拓く新たな可能性


雪ヶ谷化学工業の事例は、サステナブル経営が単なる社会貢献活動ではなく、企業の競争力強化と人材戦略の核心となりうることを示している。特に、若手エンジニアの離職率低下や環境系人材の採用増加は、人材獲得競争が激化する現代において極めて重要な成果といえる。

坂本社長の言葉「全ての経済行為は価値の交換である」は、サステナブル経営の本質を表している。安価で良いものを提供するだけでなく、社会的価値を創出し、それを従業員、顧客、社会と交換していく。この新しい価値交換のモデルが、雪ヶ谷化学工業の持続的な成長と、社会課題解決の両立を可能にしている。

この取り組みは、日本の製造業全体に新たな可能性を示唆するものであり、今後の展開が注目される。サステナブル経営は、企業の存続と成長、そして社会貢献を同時に実現する強力なツールとなりうる。雪ヶ谷化学工業の挑戦は、まさに「手つかずの問題を豊かさに変える」というSDGsの理念を体現しており、多くの中小企業にとってのロールモデルとなると言える。

注意書き:このメルマガの内容は、雪ヶ谷化学工業を取り上げた複数の記事およびHPなどを私が個人的に読み、私自身が理解した内容を噛み砕いて発信しています。
上記記事に記載されている内容および企業の取り組みを保証するものではありません。

◆お知らせ

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