若手が集まり、辞めない職場づくり〜中規模工務店における“働きがい改革”の真髄〜

◆企業情報

企業名: 株式会社三条工務店
本社所在住所: 大阪府大阪市浪速区稲荷1丁目5-3
創業年月日: 2013年
資本金: 980万円
従業員数: 103名（2023年時点）
事業内容: 不動産仲介・リノベーション・建築・新築分譲、開発・土地

◆サステナブル経営にシフトした背景

三条工務店がサステナブル経営へと大きく舵を切った背景には、日本の不動産業界が直面する深刻な空き家問題と、それに伴う社会的責任への強い問題意識があった。野村総合研究所の推計によれば、2033年には日本全国の空き家数が2,150万戸に達すると予測されており、放置された空き家は地域の安全、景観、資産価値に悪影響を及ぼす社会問題となっている。

同社はこうした課題を自社の事業機会と捉え、SDGs（持続可能な開発目標）のうち「11：住み続けられるまちづくり」「12：つくる責任・つかう責任」を経営の柱に据えた。単なる利益追求ではなく、空き家再生を通じて持続可能な地域社会づくりに貢献し、社員の働きがいも両立させることを目指したのである。

◆具体的な取り組み内容

🔼空き家リノベーション事業の拡大と環境配慮の徹底
三条工務店は、年間多数の中古住宅を買い取り、専属デザイナーによる高品質なリノベーションを実施している。リノベーションにあたっては断熱性能の向上や省エネ設備の導入、建材の再利用など、環境負荷を抑える工夫を積極的に取り入れている。また、施工現場で発生する廃棄物の削減やリサイクル率の向上にも取り組んでいる。

🔼女性や若手が活躍できる職場環境の整備
柔軟な働き方や時短勤務制度の導入、産休・育休制度の充実、能力開発研修の拡充など、多様な人材が長く働き続けられる環境整備を進めている。さらに、社内の評価制度やキャリアパスの透明化にも注力し、性別や年齢にかかわらず活躍できる組織づくりを目指している。

🔼アフターフォローと地域密着型サービスの強化
物件の引き渡し後も、定期的な点検やメンテナンス、住まいに関する相談窓口の設置など、顧客の安心を支えるアフターサポート体制を構築している。また、地域の不動産や住宅に関するさまざまな相談に応じ、地域住民との信頼関係を築いている。

🔼SDGs推進に関する社内教育と啓発活動
全社員を対象としたSDGsやサステナビリティに関する研修を定期的に実施している。最新の社会課題や環境配慮に関する知識を学ぶ機会を設けることで、社員一人ひとりが自分ごととしてサステナブル経営に取り組めるよう、意識改革と行動変容を促進している。また、社内報や勉強会を通じて、事例共有や意見交換の場も積極的に設けている。

◆取り組みによって得られた効果

🔼採用力の強化
詳しい増加率は発表されていないが、新卒応募者数が急増し、2025年度採用では56名の内定承諾を獲得している。また、20代営業職の平均年収612万円（店長職1,084万円）
※全員がこの数値とは限らない。あくまでも参考数値
という待遇が若手を惹きつけ、2023年の従業員数103名から2025年には168名へと急拡大した模様。

🔼離職防止と定着率向上
具体的数値は確認できなかったが、業界の平均離職率は20%程度と言われているが、それを大幅に下回る数値を維持できており、入社1年目離職率改善しているという。

🔼従業員満足度の向上
能力開発研修参加率90%超、女性管理職比率3年で2倍拡大など、多様な人材が活躍できる環境を構築している。2025年新卒採用の内定者インタビューでは「評価制度の透明性」と「成長機会の多さ」が入社理由の上位に挙がっている。

🔼業績の拡大と企業価値の向上
2022年の売上高55.6億円から2023年78.2億円、2024年には94.4億円と年率30%超の成長を達成している。不動産買取件数はその年によってバラツキはあるものの、年間750件〜1,200件程度となっており、2025年には150億円の売上目標を掲げている。この急成長は中古住宅のリノベーション需要増加と直結しており、関東進出後の2025年には10店舗体制へ拡大予定である。

🔼地域経済への波及効果
空き家再生事業を通じた地域活性化が評価され、2024年には大阪府から経営革新計画承認企業に認定されている。グループ会社（株）雅家の事故物件専門再生事業と相まって、地域の不動産価値向上に貢献している。

◆今後の取り組み内容や展望

同社は関西圏での実績をもとに、関東圏への進出を加速させている。2025年までに千葉船橋支店や京都河原町支店などの新規開設を予定し、2025年には関東・関西で10店舗体制を目指している。また、グループ会社による事故物件の専門再生や、ホテル事業など新分野への進出も計画している。中長期的には、5年後に売上600億円超えを目標に掲げ、空き家再生を軸とした持続可能な街づくりのリーディングカンパニーを目指している。

今後も「家族団らんを促進する住宅」の提供や、社員とその家族の幸せを追求する制度設計、地域社会との連携強化を通じて、社会課題の解決と企業成長の両立を図っていく方針である。

◆まとめ

三条工務店は、空き家問題という社会課題を自社の成長機会と捉え、SDGsを経営の中核に据えたサステナブル経営を推進してきた。環境配慮型リノベーション事業の拡大、家族団らんを重視した住宅づくり、女性や若手が活躍できる職場環境の整備、地域密着型サービスの充実など、多角的な取り組みが功を奏し、採用力や定着率、業績の大幅な向上を実現している。

これらの成果は、単なるビジネスの成長にとどまらず、地域社会の持続的発展や社員一人ひとりの働きがい向上にも直結している。今後も三条工務店は、サステナブル経営の先進企業として、社会とともに成長し続ける存在であり続けるものである。

注意書き：この内容は、該当企業を取り上げた複数の記事およびHPなどを私が個人的に読み、私自身が理解した内容を噛み砕いて発信しています。
上記記事に記載されている内容および企業の取り組みを保証するものではありません。