第4回サステナビリティ情報開示のメリットを最大限に活かす
◆はじめに
前回までは、サステナビリティ情報開示の義務化や、中小企業が抱える課題について解説してきました。今回は、サステナビリティ情報を開示することによって企業が得られる具体的なメリットについて、より深く掘り下げていきましょう。
◆企業イメージの向上とブランド価値の強化
• 消費者の信頼獲得
サステナビリティへの取り組みを積極的に開示することで、環境や社会問題に関心を持つ消費者の共感を呼び起こし、企業イメージを向上させることができます。
• ブランド差別化
競合他社との差別化を図り、自社のブランド価値を高めることができます。特に、若年層や環境意識の高い消費者からの支持を獲得しやすくなります。
さらに、消費者だけではなく、採用においても効果を発揮します。
中小企業は応募数自体が少ない傾向にあります。現代の就活者はSNSにおいて事前に企業をリサーチするのが当たり前の時代です。
この企業はどんな会社なのか?どんなことをしているのか?その企業の社会的存在意義とは何なのか?などなど・・・そういった情報をSNSやHPから取得しに行きます。
つまり、それらの情報が掲載されていない会社はそもそも候補に上がってこないという時代だからこそ、他企業との違いや自社の強みをサステナビリティ分野で表現することで注目されるようになります。
• リテンション率の向上
顧客のロイヤリティを高め、リピート率や顧客維持率の向上に繋がります。
自社のファンが増えると言い換えることができます。
ファンが増えると、安易な価格競争に巻き込まれず、自信を持って自社の商品やサービスを販売していくことができるようになります。
◆リスク管理の強化と事業の安定化
• リスクの早期発見
サステナビリティに関するリスクを事前に把握することで、問題発生時の影響を最小限に抑えることができます。
• サプライチェーンの透明化
サプライチェーンにおける人権問題や環境問題などのリスクを特定し、対策を講じることで、企業全体の信頼性を高めることができます。自社のみならず、上流から下流まであらゆるステークホルダーに対する対策が打たれることにより、自社のビジネスが持続可能となっていきます。
• 法規制への対応
サステナビリティに関する法規制への対応をスムーズに行うことができ、法的リスクを低減できます。
◆投資家からの評価向上と資金調達の円滑化
• ESG投資の拡大、低コストでの資金調達、持続可能な取引の構築
ESG投資や各銀行のサステナブルファイナンスが拡大する中、サステナビリティ情報を積極的に開示している企業は、投資家や銀行から高い評価を得ることができます。つまり、対外的な企業価値が上がると言うことです。大手を取引先に持つ中小企業にとっては、取引先からの評価が向上し、持続可能な取引に繋がっていきます。
また、銀行によって条件は様々ですが、各銀行で設定されたサステナビリティ関連の目標値の達成度合いによって金利が変動する仕組みを活用し、自社で頑張った分だけ低金利で融資を受けることができるようにしていくこともできます。
◆イノベーションの促進と新たなビジネスチャンスの創出と生産性の向上
• 新たな事業モデルの創出
サステナビリティに関する取り組みを通じて、新たなビジネスモデルや製品・サービスを開発することができます。
• 競争優位性の確立
サステナビリティ分野における競争優位性を確立し、新たな市場を開拓することができます。
• 従業員のモチベーション向上と組織活性化
サステナビリティに関する取り組みを通じて、従業員のモチベーションを高め、企業全体の活性化を図ることができます。社会貢献への実感が従業員の誇りとやりがいを醸成する効果があり、結果として、業務効率と生産性の向上にも寄与すると報告されています。
• 離職率の低下と人材定着
全社方針が明確に打ち出されていることにより、業務で迷いが出た時の北極星(何のためにやるのか?)として活用できるため、個人や上司間の判断のブレや間違った決定がされにく状況が作れます。よって、自分たち仕事が何のためにやっていて、社会の何に貢献しているのか?がハッキリしており、上司によって言うことが違うなどのストレスの軽減にも繋がり、結果として離職率低下や定着率向上に寄与すると言われています。
◆まとめ
今後も、この分野での取り組みがますます重要性を増していくことは間違いありません。自社の特性に合わせた効果的な情報開示戦略の構築が、これからの企業経営の重要な課題となっていくことでしょう。サステナビリティ情報開示は、企業の成長と発展に不可欠な要素となっています。企業イメージの向上、リスク管理の強化、投資家からの評価向上、そして新たなビジネスチャンスの創出など、様々なメリットをもたらします。
サステナビリティ情報開示は、単なる義務ではなく、企業が持続可能な社会の実現に貢献するための重要な機会であると言えるでしょう。
【次回予告】
次回で最終回となります。最終回では、そもそも「サステナビリティ経営」とは何なのか?サステナビリティ経営には何が必要とされているのか?などについて、最終回で総括的に触れていきたいと思います。