大手食品メーカー×地域水産加工業者　「漁業資源の持続的利用と地域雇用創出の両立を実現」

◆はじめに

近年、世界的な漁業資源の減少が深刻化しており、海洋資源の持続的利用が大きな社会課題となっています。日本の地域漁業も例外ではなく、乱獲や環境変動、担い手不足などさまざまな問題が顕在化しています。こうした中、地域経済と自然環境を守りながら持続可能な漁業を実現するには、従来の枠を超えた新しいビジネスモデルの構築が急務となっています。

◆企業紹介

大手食品メーカーは水産物の調達や加工、販売において重要な位置を占めており、CSR（企業の社会的責任）方針の下で「持続可能な水産資源の利用」と「地球環境保全」に積極的に取り組んでいます。具体的には、資源状態の調査や、サプライチェーン管理における透明性・責任ある調達体制の構築、持続可能性認証（MSC、ASCなど）製品の普及推進など、多彩な施策を展開しています。
一方、地域水産加工業者は地域経済や雇用を支える一方で、漁獲量減少や販路縮小、原料確保の難しさといった課題を抱えています。

◆コラボの背景・目的

こうした状況を受け、大手食品メーカーと地域水産加工業者の連携が注目されています。
その背景には、
①    漁獲量を科学的に管理しながら地域経済を維持する
②    過剰な漁獲や無駄な廃棄を防ぎつつ高付加価値商品の創出や販路拡大を図る
③    消費者・流通業者・認証団体など多様なステークホルダーと連携し、新しいビジネスモデルの構築
という狙いがありました。

◆具体的取り組み内容

🔼漁獲量に応じた加工調整の仕組み
科学的調査やデータ管理をもとに、漁獲量の変動に応じて生産・加工計画を柔軟に調整する体制を整備。これにより、原料の安定供給とフードロス削減を両立しています。

🔼地域漁業者との連携体制
地域の漁業協同組合や水産加工業者、行政が連携し、資源モニタリングや管理、禁漁期の設定、小型魚のリリース、違法漁業の排除など資源を守るための仕組みを実施。トレーサビリティや水産流通適正化法にも対応し、流通の健全化も進めています。

🔼持続可能な漁業支援の施策
認証制度（MSC認証など）の取得支援や、スマート漁業技術（リアルタイム管理・データ活用）の導入、食育活動や消費者啓発など多様な取り組みを合わせ、地域全体でサステナブルな価値創造を推進しています。

◆社会的インパクト

🔼漁業資源の保全効果
科学的根拠に基づく漁獲管理や資源調査、認証制度の普及により、魚種の多様性と資源量の回復が報告されています。
これにより、未来世代へ資源を残す仕組みづくりが前進しています。

🔼地域雇用維持
水産物の安定供給や高付加価値商品の開発などにより、地域の雇用が維持・創出されているとともに、地元経済の活性化にもつながっています。
さらに、観光や教育、食育との連動で、一帯の地域活性化効果が広がっています。

◆課題と今後の方向性

🔼持続的協力体制の構築課題
情報共有や人材育成、多様なステークホルダーとの関係構築など、地域全体での合意形成や連携が依然として課題です。特に、利益配分のあり方や行政支援の持続性、現場のモチベーション維持など細やかなマネジメント力が問われます。

🔼他地域への展開可能性
日本各地で同様の連携モデルが生まれつつあります。地域の特性や課題に応じたアプローチを工夫しつつ、モデルケースの知見を他地域へ展開し、全国規模での「持続可能な水産業」ネットワーク拡大が期待されています。

◆まとめ

大手食品メーカーと地域水産加工業者の連携は、単なる資源供給の枠を超え、社会課題解決型ビジネスの好例です。企業のCSRとしての責任と地域経済・社会の活力維持を協働で実現し、「持続可能な水産業」という全国展開可能な新たなモデルケースとなりつつあります。今後も多様なステークホルダーが連携し、日本の海と漁業の未来を守る“協創”が一層求められています。