【第2回】CSVは設計できる〜共通価値を生む5つのステップ〜

目次

  1. CSVは設計できる共通価値を生む5つのステップ
  2. 1.CSVは理念だけでは動かない
  3. 2.ステップ1 社会課題を“市場の課題”に翻訳する
  4. 3.ステップ2 自社の強みを社会課題との接点で見直す
  5. 4.ステップ3 社会価値と利益が同時に生まれる仕組みを設計する
  6. 5.ステップ4 バリューチェーン全体で価値が生まれる場所を探す
  7. 6.ステップ5 成果を測り、KPIに落とし込む
  8. 7.中小企業が実践する際のポイント
  9. 8.よくある失敗は何か
  10. 9.CSVは偶然ではなく、設計によって生まれる

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1.CSVは理念だけでは動かない

CSV(Creating Shared Value)は、社会に役立つことをすれば自然に生まれるものではありません。
PorterとKramerはCSVを、企業の競争力を高めながら、同時に地域社会の経済的・社会的条件も前進させる考え方と実務として示しました。つまりCSVは、善意の活動や付加的な社会貢献ではなく、事業戦略そのものとして捉えるべきものです。

この視点は、とりわけ中小企業にとって重要です。2025年版中小企業白書では、中小企業は日本の企業数の99.7%、従業者数の約70%を占めるとされています。日本の経済や雇用、地域社会を支えているのが中小企業である以上、社会課題と経営をどう結びつけるかは、一部の大企業だけのテーマではありません。

では、CSVはどのように生み出していけばよいのでしょうか。
ここでは、中小企業でも実践しやすいように、CSV創出を5つのステップに整理して考えてみます。


2.ステップ1 社会課題を“市場の課題”に翻訳する

最初に必要なのは、社会課題をそのまま掲げることではありません。
少子高齢化、人口減少、環境負荷、地域の担い手不足といった大きな課題を、自社の市場における未充足ニーズへ翻訳することが出発点です。

PorterとKramerは、社会的ニーズこそが市場を定義すると述べています。つまり、社会課題を「誰の、どんな困りごとか」にまで落とし込めたとき、初めて事業の入り口が見えてきます。

たとえば「高齢化」というテーマをそのまま扱っても事業にはなりません。
しかしそれを「高齢者でも使いやすい製品が不足している」「人手不足の現場で省力化ニーズが高まっている」と捉え直せば、顧客の課題として具体化されます。
CSVの第一歩は、社会課題を理念の言葉のままにせず、顧客の困りごととして翻訳することです。


3.ステップ2 自社の強みを社会課題との接点で見直す

次に必要なのは、自社の強みの再定義です。
ここで見るべきものは、単なる技術力だけではありません。コア技術、既存顧客との関係、地域ネットワーク、現場に蓄積された知見、保有データなども含めて、自社の資産を棚卸しすることが重要です。

そのうえで問うべきは、
「この強みは、どの社会課題と交差するか」
ということです。

PorterとKramerは、CSVの実現には社会的ニーズへの理解だけでなく、企業の生産性の源泉を深く理解することが必要だと示しています。社会に良いことをしたいという発想だけでは、競争優位にはつながりません。自社が本当に強みを持つ領域と社会課題が重なるところにこそ、CSVの可能性があります。


4.ステップ3 社会価値と利益が同時に生まれる仕組みを設計する

CSVで最も重要なのは、社会価値と経済価値が同時に発生する構造をつくることです。ここが曖昧なままでは、良い活動ではあっても、持続する事業にはなりません。

CSVの設計には、大きく二つの方向があります。
一つは、エネルギー使用量の削減、廃棄ロスの削減、安全性向上、物流効率化などによって、社会的にも望ましく、同時にコストや損失も減らすコスト削減型です。
もう一つは、これまで十分に満たされていなかった社会的ニーズに対し、新しい製品やサービスを提供して成長機会を生む新市場創造型です。

重要なのは、「誰が対価を払うのか」「どこで利益が出るのか」を明確にすることです。
社会性があることと、事業として成立することは別です。CSVは、その二つを両立させる設計でなければなりません。


5.ステップ4 バリューチェーン全体で価値が生まれる場所を探す

CSVは、製品やサービスの中だけで生まれるとは限りません。
調達、製造、物流、販売、使用、廃棄といったバリューチェーン全体を見渡すことで、新たな可能性が見えてきます。

PorterとKramerは、企業のバリューチェーンは、資源利用、健康と安全、労働条件、平等、サプライヤーの持続可能性など、さまざまな社会課題と密接につながっていると述べています。

たとえば、調達では地域企業との連携やサプライヤー育成、製造では省エネや安全性向上、販売では情報格差に配慮した提供方法、廃棄では回収や再利用の仕組みづくりなどが考えられます。
つまりCSVとは、商品企画だけの話ではなく、事業プロセスのどこで社会価値を生み出せるかを見極める作業でもあるのです。


6.ステップ5 成果を測り、KPIに落とし込む

CSVは、理念や印象だけでは続きません。
成果を測定し、経営管理の中に組み込む必要があります。

PorterとKramerは、CSVには事業単位ごとの具体的で適切な指標が必要であり、多くの企業は社会的影響を測っていても、それを事業上の利益と十分に結びつけられていないと指摘しています。

そのため、売上高や利益率のような財務指標だけでなく、離職率、事故件数、不良率、CO2排出量、顧客満足度、回収率といった社会インパクトの指標も合わせて設計することが重要です。
さらに大切なのは、それらの指標がバラバラに存在するのではなく、**「この事業はなぜ社会にも会社にも意味があるのか」**というストーリーとして語れることです。


7.中小企業が実践する際のポイント

中小企業がCSVに取り組む際、最初から大規模投資をする必要はありません。
むしろ現実的なのは、既存事業を見直し、「この仕事はどんな社会課題とつながっているのか」を再解釈することです。

すでに持っている技術、顧客基盤、地域との関係性を生かしながら、社会課題と交わる点を探していく。その積み重ねが、無理のないCSVの出発点になります。
一方で、経営トップがCSVを単なる広報テーマとして捉えてしまうと、採算設計も部門横断も進まず、活動は続きません。CSVは、現場任せではなく、経営意思として位置づけられて初めて動き出します。


8.よくある失敗は何か

CSVでよくある失敗の一つは、CSRとの混同です。
PorterとKramerは、従来のCSRは評判対策や周辺活動に寄りやすく、事業の中心に入り込みにくいと指摘しています。

画像
CSRとCSVの違い

また、採算性の設計不足も大きな落とし穴です。
社会的意義が高くても、収益の仕組みが曖昧であれば継続できません。
さらに、特定部門だけに任せてしまうと、調達・製造・営業・管理が連動せず、部分最適に終わってしまいます。

CSVは、良い活動を足し算することではなく、事業そのものを組み替える発想です。だからこそ、全社で設計する必要があります。


9.CSVは偶然ではなく、設計によって生まれる

CSVは偶然生まれるものではありません。
社会課題を市場ニーズに翻訳し、自社の強みと結びつけ、利益が出る仕組みを設計し、バリューチェーンに埋め込み、成果を測る。
この流れを意図的につくっていくことで、社会価値と経済価値は同時に立ち上がります。

CSVは理想論ではありません。
むしろ、社会の変化を経営の機会として捉え直すための、極めて実践的な考え方です。
次回は、代表的な事例をもとに、CSVが実際にどのような形で具体化されているのかを見ていきます。

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